東京高等裁判所 昭和31年(う)2848号 判決
被告人 山本重男、田中重夫こと田中重男
〔抄 録〕
所論に鑑み記録を精査するに、法務省矯正局指紋係作成名義の指紋照会回答書及び司法警察員に対する被告人の供述調書(昭和三十一年七月十三日付)の各記載によれば、被告人は昭和二十八年五月三十日東京地方裁判所において、窃盗同未遂罪により短期一年長期三年、未決拘留日数七十五日算入の判決を受け、右刑の執行を受け、昭和三十一年一月十七日仮釈放によつて出所し、その後仮釈放の取消なくして同年三月三十一日右刑の長期を経過した事実を認めることができる。してみれば少年法第五十九条第二項により、被告人は、昭和三十一年三月三十一日右判決による刑の執行を受け終つたことになるのであるが、原判決の認定した本件犯行は、昭和三十一年七月十二日のことであるから、被告人の本件犯行は、前の刑の執行を受けてから五年以内に行われたものであり、刑法第二十五条第一項の執行猶予を付する要件を具備しないものといわなければならない。然るに原判決が、本件犯行について、被告人に対し懲役一年二月に処し、四年間右刑の執行を猶予する旨の言渡をしているのは、所論のとおり法令の適用を誤つたものであり、この誤が判決に影響を及ぼすことは明らかであるから論旨は理由があり、原判決は全部破棄を免れないものである。
(谷中 坂間 久永)